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今日は降るような。日和やない。
今日は皆既日食。天気が心配だ。テレビの報道も加熱。カメラに向かって「子供のときから2009年を楽しみにしていました!」と語り、40万円もする撮影機材のリハーサルに余念のない天文マニアの方のマジな情熱を見ていると、雨が降って全く見られませんでした、という展開はとてつもない悲劇だが、滅多に見られない喜劇であるような気もしてきた。
もちろん、晴れてほしい。友達も何人か日食を見るためにトカラ列島の方まで行ってるし、エリカ様に不機嫌になって欲しくないし。毎回思うが、一人の女性の機嫌の動向がここまで注目されるとは驚くべきことだ。現代の天照大神か。ここでエリカ様が不機嫌になったら日本の経済もさらに冷え込むことになりそうなのでそれは避けたい。
ご機嫌エリカ様、日食見物で奄美大島へ
福岡管区気象台によると、22日の県内の天気予報は「曇り一時雨」で降水確率は60%で日食の観測は難しいだろうと言われている。しかし、諦めてはいけない。桂枝雀の「日和ちがい」の枕を晴れを願うすべての人に見て欲しい、聴いて欲しい。枕でこの重さというか壮大さはすごい。
驚くことの重要さ。
平岡正明『哲学的落語家!』
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480885227/
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 22, 2009 3:06 am
すばらしき空の演出
山下洋輔トリオ行ってきた。
凄かった。
音量的、時間的には物足りなさを感じてしまったがそこは腹八分目ってことで自分を納得させる。
公式ブログによるセットリスト
第1部
1. 第4期山下洋輔トリオ(+1)
山下洋輔(p), 小山彰太(ds), 林 栄一(as), 菊地成孔(ts, 武田和命代役), 國仲勝男(g)
・回想(林 栄一)〜STRAWBERRY TUNE(林 栄一)
・円周率(小山彰太)
・For M(山下洋輔)〜GENTLE NOVEMBER(武田和命)
2. 第3期山下洋輔トリオ
山下洋輔(p), 坂田 明(as, cl), 小山彰太(ds)
・BANSLIKANA(山下洋輔)
・GHOSTS (A. Ayler)
第2部
3. トークコーナー
相倉久人, 菊地成孔
4. 第2期山下洋輔トリオ
山下洋輔(p), 坂田 明(as), 森山威男(ds)
・CLAY(森山威男)
・CHIASMA(山下洋輔)
5. 第1期山下洋輔トリオ
山下洋輔(p), 中村誠一(ts), 森山威男(ds)
・木喰(中村誠一)
・ミナのセカンドテーマ(山下洋輔)
アンコール
出演者全員
・GUGAN(山下洋輔)
時代が遡っていくほどやはり濃くなる。第3期山下洋輔トリオのGHOSTSでの坂田明のハナモゲラ絶叫でテンション急にあがる。森山威男のドラム半端ない。
最年長77歳の相倉久人と最年少46歳の菊地成孔のジャズ漫談も面白かった。結成時のころの相倉さんはめちゃくちゃヒップスターで黒かった、とか、演奏が始まってもステージに残ってるってのがラッパーの始まりですよ、とMC相倉にリスペクトーク。さすがサックス吹き、口がお上手。
CLAYの演奏が終わる頃、空に綺麗な虹が出現。しかも二本。観衆の注目をあびまくる。CLAYは平岡正明さんの葬儀で流れていた曲だ。
↑写真はネット上から無断拝借。ボクの見た空と同じ。
いい演奏の後は、非常に気持ちのよい風が身体を抜ける。これは気のせいだろうか。
今回の復活祭の様子はテレビで放映される予定です。楽しみ。
Yosuke Yamashita Trio 1972
相倉×菊地 対談
http://e-days.cc/features/jazz/uekusa01/index.html
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 21, 2009 2:54 am
7月の地下大学 都市と新青年たち 社会的地理と運動する欲望
都市と新青年たち 社会的地理と運動する欲望
── ウヨ・フリーターの根拠を抉り取るために
・「秋の嵐」の映像記録 鹿島拾市 speaks
・ドキュメンタリー「新宿1970」 藤田五郎 speaks
・7月20日(月・休日)14~18時
・素人の乱12号店・北中ホール
・資料代500円+出来れば投げ銭
この数年来、フリーター運動、素人の乱、「自由と生存の家」
そして様々なフリースペースを徘徊する訳の分からない人びと、
「新青年/新女性」たちが都心部に現れている。
その一方で、埼玉の蕨で起きた排外デモのような排除の動きも、
ネット社会の巨大なゴミ箱の中から這い出してきた。
私たちの生きる「地理」は今、明らかに変貌しようとしている。
68年世代には理解できない少年・少女たちの運動が都市の路上に現れたのは、
1980年代終わりの「秋の嵐」からだったと思う。
彼らが出没した原宿は、当時半蔵門線が関東のディープ北部まで開通したばかり。
そのラインに乗って、郊外の低所得ローティーンたちが「竹の子族」やpunksとして集まり、
歩行者天国では隣にイラン人たちの一時的なコミュニティも生まれていたのである。
それでも竹の子族や家出少女たちは、中東から来た人たちを叩き出そうとはしなかった。
無惨な原理主義と化した「68年」の残照が消えた頃、新しい地理の運動が現れる。
しかし、「68年」そのものが新宿を中心とした「新青年/新女性」たちの大爆発だったのである。
新宿ー原宿ー高円寺と、大きく湾曲する都市空間の中で欲望する運動は動き続ける。
「1970年」の1年間で急激に変貌する新宿の街を撮ったNHKドキュメンタリーや、
「秋の嵐」による原宿路上でのスピーカーズ・コーナーを記録した80年代の映像を見ながら、
「ウヨ・フリーター」が出現する根拠を思い切り深く抉り取りたい。
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 19, 2009 12:26 pm
再会だよ、いやー親と子の再会だよ
日課のぷらぷら散歩。気分はソロー。バビロンの解毒散歩のときに初見したカルガモの親子発見。いや、親がいない。三匹の子ガモが必死に川の流れを逆流している。どうしたものか、としばらく見学していると事情通のおっちゃんが近づいてきて解説してくれた。その解説が素晴らしかったのでデジカメの動画機能を作動。筋金入りのカルガモ・ウォッチャーのおっさんはこう語る。
「昨日、役人の奴らが川の掃除したんだよ。荒っぽくやるもんだから子ガモが流されちゃって。こいつらはずっと向こう橋の方から頑張って泳いできたんだよ。(反対側を指して)あっちに親ガモと残りの2匹の子ガモがいて、もうすぐなんだよ。」
通りすがりの散歩人ひとりひとりに解説してくれる親切なおっちゃん。何パターンかの解説を聴いていたが、毎回若干内容が違うから面白い。暇人と思うなかれ。それがおっちゃんの仕事であり芸なのだ。
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 18, 2009 6:49 pm
残酷箱庭、ヤヴァン極まる
なるべく放任主義で狭いベランダにひとつの生態系を作る試み、ヤヴァン・ガーデニングからの報告。
サンショウにまた芋虫がついた。アゲハの幼虫だと思われるが、あえて芋虫と呼びたい。アゲハ蝶に見事変態を果たした後に、あれはアゲハ蝶の幼虫だったのだ、と回顧すべきもので、いまは得体のしれない芋虫でしかない。
ボクの前に姿を現したとき。数匹いたが全員養えないので一匹に間引く。一匹だけでも葉を丸ごと食べられてしまうリスクがある。この時期はまったく可愛げがないので躊躇なく排除できる。
一回目の変態が終わると、もう娘をもったパパのような気分になる。美しいドレスを纏い、パパのもとを旅立っていくまで大事に育てようと心に誓う。
翌日、事件は起きた。花嫁姿を夢見たのがまずかった。アゲハ蝶の幼虫ではないと言いつつも、心のどこかでアゲハ蝶になることを信じていた矢先。目の前にあるのは、串刺しにされた芋虫。鳥のご馳走である。昨晩の強風の仕業か。サンショウの逆襲のようにも思える。
数時間後、鳥に食われる前に解体屋さん登場。ボクが仕事をしなくても蟻たちが片付けてくれる。らくちんだ。ヤヴァンな生態系ができつつあることに、悲しい気分が吹き飛んで、愉快な気分になる。
翌日にはもう影形なし。あの芋虫はアゲハの幼虫ではなく、蟻の栄養源だった。このように回顧的にしか名指しできないから芋虫と呼ばざるをえないのである。
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 18, 2009 5:33 pm
雨宮処凛さんにインタビューされました。
佐藤優責任編集の角川学芸WEBマガジン『WEB国家』の、雨宮処凛さんの「プレカリカルチャー宣言」のコーナーで∞+∞=∞名義の僕のインタビューが掲載されています。僕の生い立ちと、主義主張やら学生運動やらRLLやらcommunioやら諸々について語っています。もしよければ読んでくださいな。
佐藤優責任編集の角川学芸WEBマガジン『WEB国家』
http://www.kadokawagakugei.com/kokka/
「プレカリカルチャー宣言」
第十一回 「変態」「文化左翼」とゴス、カルチャージャミング、地下部室、その他もろもろ
http://www.kadokawagakugei.com/kokka/index.php?-detail=006
PS 僕の放送禁止用語丸出しの罵詈雑言をそっくりそのまま!!UPしてくれた雨宮さんと編集者の方に感謝!!なんか問題が起こって佐藤優さんに迷惑がかからないことを祈って?ます。いや、そんなこと、ないんだろうけど。
- ∞+∞=∞
- By ∞+∞=∞ / Jul 17, 2009 8:17 pm
美空ひばり 幻のブラジル公演
MJの高画質動画をYoutubeにアップしたら、なかなかの反響でやたらコメントやチャンネル登録のメールがきて困っている。というのは嘘でうれしい。人のための仕事は気持ちいい。人を喜ばせる仕事や困っている人を助ける仕事ならいますぐにでもやりたいんだが(実際には日常生活ですでにやっているのだが)、残念、ハローワークにはそんな仕事ないね。無事本日4回目の失業認定を終えた。ボクのベーシック・インカムもあと二か月余り・・・
マイYoutubeに登録してくれる人が増えれば増えるほど、こっちも何か仕事をしなきゃいけないという気分になってくる。はたしてこれが「しごと」というかも疑問である。ボランティアでもない。遊びに近いが遊びではない。この無償の愛の労働に対するもっと軽やかな言葉が欲しい。できれば賃金も。
MJでひっかかった方に今度は日本のスーパースターの映像を鑑賞していただこう。演歌、歌謡曲、ジャズ、ラテン、ロックンロールな混淆ソウルミュージック。
美空ひばり 幻のブラジル公演 MISSORA HIBARI
書籍化されていないDJ寄席「芸能の深層」の回で使用した映像資料でもある。平岡さんはそこに何を見たか。
平岡正明『美空ひばりの芸術』
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 17, 2009 7:25 pm
タモリだよ!
今週は「笑っていいとも」にタモリが出てないので寂しい。その気持ちをYoutubeで補充しよう。
久米明のアフリカもの最高。
タモリ・徹子の各国ベッドシーン。
寺山修司の思想模写。 関連動画で本物と比較してみよう。
これはビデオを購入して何度も観た。全ネタ最高だがアングラ芝居ごっこ特に好き。DJ寄席第二弾で平岡さんと一緒に観て当時のことをいろいろ語ってもらった。2006年に芸大でやったイベント「スバラシキナカマ」はこの番組からのインスピレーション。
「タモリにはサルサが合う。俺の得意の文句で言うと、ジャズは、その夜いちばんいいソロをとった男がファンのなかのいちばんいい女と寝る音楽であり、レゲエは、ようし、革命やってやろうじゃないかと度胸をきめたが、マリファナやってトンじゃって、どうでもいいんじゃないとやめてしまう音楽であり、サルサは、みんなあつまってワイワイやって、その夜、一大フェラチオ・パーティーをやる音楽である。」
平岡正明『タモリだよ!』
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 15, 2009 1:46 am
さよならの向う側
平岡正明さんのお葬式が終わった。弔辞を読んだのは梁石日さん、田中優子さん、山下洋輔さん。それぞれの言葉に愛と魂がこもってて目頭が熱くなる。山下洋輔トリオのジャズが狂おしく流れる(CDです、念のため)。
しかし、いまだに平岡さんが死んじゃったという強い実感がない。平岡さんの生声のアジテーション(講演)を18時間浴びたボクの脳は妙な発達を遂げていて、平岡本をめくるといつもあの色気のある声が聴こえてくる、気がするのだ。
現在の書き手で純粋にファンと言いきれる人はなかなかいないが、平岡さんに対してはファンという言葉しか思いつかない。その証拠に7冊もの本にサインを貰っているミーハーぶりなわけだが、なんでそんなにサインを貰う必要があったのか、今となっては疑問に思う。やはりファン心理だったとしか言いようがない。
ファン心理も行き過ぎるとタイヘンだ。寄席をでっちあげ、席亭になりすまし、平岡正明さんを芸人として招聘。これは妄想ではない。当時高等教育機関で公開講座の企画運営の仕事をしており、平岡さんのことをを「カルチュラル・スタディースの元祖」(金玉主義の平岡さんとカルスタって相性悪いでしょ)などと学術的にもっともなことを言って上層部に企画を通し、実現した。
平岡さんの射程はカルスタなんてそんな狭いものじゃないけど、「汚い世界の問題をアカデミズムという清潔な空間に持ち込む」(スチュアート・ホール)という意味ではカルスタだった。ちんこまんこうんこきんたまかくめいまりふぁな・・・・普段、教室で聴けないリアルな言葉がたくさん聴けた。一ファンとして贅沢過ぎる時間だった。「嗜好は現実化する」とはよくいったものだ。
その様子は『平岡正明のDJ寄席』という本に収められている。5週にも及ぶ連続講義を聴講したマルボロ内親王はこんな感想を書いてくれた。カルスタというよりベンヤミン? 長いが引用する。
平岡さんの話はパッケージされていない、というかされえない。これは本質の問題です。運営者の方は、「寄席」の公式の責任者でもあり、またパブリシティー上の都合もあるからトピックやタイムテーブルを設定し、それなりの方向付けを試みていたみたいですが、そういったパッケージ的な期待という点では、ほぼ裏切られていたんのではないでしょうか?いや、それでいいのです。
平岡さんの語りを形容する言葉なりイメージなりを自分なりに探しましたが、とりあえずいま思いつくのはひとつ、安直だけれど、星座。「宝石箱を撒き散らしたような夜空」なんて表現がありますが、これは同時に平岡さんを形容する表現でもあります。まき散らされた星々は、それ自体はもちろん星座ではありません。星座なんてのはその時々の感傷が空に投影されたものであり、他にどのようなものでもありえますし、同じ星の組み合わせでも名前はどうにでもつけられる。つまりそういうことなんです。
平岡さんの二つの源泉、記憶力と妄想力。それらはもちろん絡み合ってはいますが、さしあたり記憶力が宝石をまき散らし、妄想力がその時々の感興に乗って星座を描き出す、と言ってみます。そしてそれらはシャワーです。星空は、理科の資料集みたいに星座の輪郭だけで構成されているのではなく、まずはシャワーとして、撒き散らされた宝石の錯乱として全身に降り掛かって五感を震撼させ、その震撼からおずおずと星座が浮かび上がってくる。とはいえ平岡正明の星座はおずおずなんてしていないのですけど。
原初には火だか水だかわからないがとにかく混沌があり、そこから光と闇が分かれ大地と空が分かれ昼と夜が分かれ、つまり星空の領分が生まれます。とすると平岡正明は、さしずめ毎回混沌から始める、毎度生まれ直す宇宙と言ったところでしょうか。その度にぼくらは宇宙の生誕を目撃しまた散らばった宝石の錯乱からそのつどの星座の浮かび上がるのをみる。イメージばかりで書いていますが、しかし平岡正明の照準先を考えるならば、これらのイメージは幾らか正当なのです。というのも平岡さんは、まぎれもなく原初に宇宙を産出したであろうあの混沌からエネルギーを得、そしてまた星座を通してまさにその地点をこそ名指そうとしているからです。
さしあたりは大地だ。それが平岡さんを黒人的なものへと結びつけます。とりわけジャズ。ジャズにうとい僕は平岡さんがジャズの名において浮かび上がらせる一くさりの星座をちゃんと把握できはしませんが、しかしその星座がなにを希求しているのかはわかる。つまり原初の混沌。それは過去へと回帰してきえてなくなることを願っているのではけっしてありません。つまりジャズの名のもとに浮かび上がるひとつの星座の配置が、そのままあの混沌を直接に指し示す形象となっている。いやはや、それはあまりに直接なので、その配置そのものを混沌と呼んでしまうそんな粗忽者がいたっておかしくはないのです。
しかもひとつの星座はけっしてまとまりをもった完成体ではありません。平岡正明の星座はクラインのつぼのように、その線をなぞっているうちにいつの間にやら別の星座の中に入り込んでいます。たとえば下町は深川遊郭の世界。第1回のオープニングはジャズ揺籃の地ニューオリンズに襲来したハリケーンカトリーナをめぐるブルースから、海抜0メートルという位相空間を通って直接深川へと僕らを導いていったのでした。ここにはすでに二つにして同時に一つである奇妙な星座が浮かび上がっているのですが、驚くべきことにこのアマルガム的星座は単にジャズにおいて見られた星座よりも、その輪郭をもってさらにいっそう紛れもなくあの混沌を直接に指し示しています。いったいどんな魔法が?
もちろんこれは始まりにすぎなかった。たとえばそれら水辺は、ビリー・ホリデイの”I cover the water front”から横浜のウォータフロントへもつながり、その先には山口百恵の菩薩姿が屹立する。そのわきでは座興のように水戸街道、甲州街道、中山道、東海道といった主要街道に遊郭を構えさせる徳川幕府の狡智なんかがほの見えたり、黄河と揚子江の中間に居を構える水滸伝梁山泊の姿がほの見える。それらいっそう錯雑とした星座は、相も変わらず驚くことによりいっそうと混沌の輪郭をぴったりと配置しています。
絶えずより錯雑と増殖しつづけその度にぴったりとあの混沌を名指してしまう奇妙な星座群。こんなものはどう考えても手のひらに乗っかるものではなく、せいぜいシャワーとして享楽するしかないのです。平岡正明の言葉は絶対的マルチメディアなのです。たしかに踊ってみせてもくれる。歌ってみせてもくれる。口でラッパだって吹いてくれる。しかしそういうマルチメディアではないのです。平岡正明のマルチメディアはあの星座群でありまたその狂気です。その前では視覚も聴覚も消え失せて、つまり星座の蠢きのみ。それが人間の不可触な根源に届くから、その残響が僕らの実際の五感を震撼させるのです。
今思うとボクの自我を押し付ける図々しい企画だったと恥ずかしく思うこともある。でも、天下の平岡正明に今の最新の文化をぶつけたらどう反応するのか?という好奇心を抑えることができなかった。そんなボクのわがままなアイディアを平岡さんはすべて受け入れてくれた。「よし、面白そうじゃないか」と噺のテーマを毎回ボクが振ると快諾してくれるのだが、実際に噺が始まるとテーマからは遠く離れ、主催者のボクをどぎまぎさせた。聴いているこっちがテーマなんてもうどうでもよくなってきたころに強引にテーマに立ち返ってきてハッとする。その見事なインプロヴィゼーションに職務も忘れて次第に魅了されていった。
終了時間に終わらないこともしばしば。逆に時間オーバーするとジャズマンが憑依したかのように言葉がスイングしだす。P-FUNKがフジロックに出演したときジョージ・クリントンがスタッフに「演奏を自分たちで止めることができないから、適当なところで電源を落としてくれ」と言ったらしいが、その電源を落とす役目のスタッフの気持ちがボクにはわかる。ノッてる人の動きを止める仕事は本当にしんどい。そんなことはしたくない。ファンとしてのボクと勤め人としてのボクの葛藤タイム・・・
書いてくるうちにいろんな感覚を思い出してくる。切がないのでやめよう。DJ寄席によってボクはファンの一線を越え、一瞬だけでも共犯者になれたのか。勝手にそう思いたい。犯罪者同盟、批評戦線、新左翼三バカトリオ、全冷中、梁山泊プロダクション(これは映画の中の話だ)、野毛大道芸・・・ と偉大な共犯関係の歴史の流れとは次元の違うちっぽけな話だけど、ボクがそう思ったのでこの感情は絶対的に正しい、と名著『ジャズ宣言』は勇気づけてくれる。あの体験を大事にしていきたい。
平岡さんのBodyはこの世になくともSoulは書籍となって100冊以上も残っている。そしてボクにはそれが肉声として聴こえる。なんという幸運。ボクらと平岡さんとの間に世代を超えた共犯関係があるとしたら、やはりリロイ・ジョーンズが「変りゆく同じもの」と呼んだブラック・ミュージックのおかげである。
最後に『山口百恵は菩薩である』を書いた平岡さんへのアンサーソングだとボクが勝手に思い込んでいるソウルミュージックをあの世に向けて届けたい。山口百恵の素晴らしさを教えてくれたことに感謝しつつ。
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jul 14, 2009 3:11 pm
小熊英二「1968(上巻)」のカバーガールを巡って。
小熊英二の「1968~若者たちの叛乱とその背景」がようやく出版され、店頭に並んでいるのを見たんだけど、驚いたことに、その表紙を飾るカバーガールに見覚えがあったのだ。ワオ。君、なんでこんなトコに!!って感じの再会。相も変らず彼女はゲバルトローザとまでは言わないが、ゲバ文字で「地歴」と書かれたヘルメットをちょこんと被って、所在無さげにそのアゴ紐をいじっているかわいらしい女の子で、僕は、彼女について直接説明を聞いた覚えがあるのだった。彼女は確か早稲田の地下部室にある歴史研究会で、ノンセクトだったような・・・・ もはやうろ覚えになってしまった説明をしてくれたのは、今は亡き、その写真を撮った張本人、新井正美さんで、新井さんは早稲田の文学部正門前にある「あかね」の初代オーナーだった。学生運動が一息ついてから新井さんは夫婦で「あかね」をオープンし、いくつかのサークルの溜まり場としてそのお店は機能していたそうだ。(ジャズ喫茶ってわけじゃないが、これまた村上春樹っぽい。そういえば当時まだ学生だった村上春樹の話もいろいろ聞いたな・・・)新井さんが病気で倒れてから新しくあかねを引き継いでくれる人を募集していたところ、だめ連の人々が立候補し、あかねはだめ連の溜まり場へと変った。そこで亡くなる直前の新井さんに会って当時自費出版した写真集を見せてもらいながら、説明を受けたのが懐かしい。かなり病巣の広がっていた新井さんは痰を切るように苦しそうなセキをしながら、当時の話をいろいろ聞かせてくれた。まだ「1968」は読んでいないが、これを執筆していた時の小熊さんの話によるとけっこう辛らつな内容なようなので、ぜひ読みたいと思う。運動にしてもヒッピーししても、なんでも、盛り上がってよかった、あの頃はよかったという話ばかりで、なぜそれがダメになったのか?という話がなかなか聞けず、うんざりしているので、早く読みたいところだ。ちょと、値段とページ数が半端でないので、気合を入れるのに時間がかかりそうだが、「民主と愛国」が意外とすんなり楽しく読めたので、期待している。(と、言ってもこちらはやはり、見苦しいし、重いんだろうな・・・)
ちなみに彼女の横のページ2人の男性は生まれたばかりの赤軍派。
- ∞+∞=∞
- By ∞+∞=∞ / Jul 13, 2009 8:24 pm
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