∞+∞=∞ Archive

一秒の世界

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 1秒で人口が2.4人増え、1秒で720トンの二酸化炭素が排出され、1秒で710トンの酸素が減少し、1秒で6000平方メートルの森林が失われる。1秒間に人は93ml×50000000000人の空気を呼吸し、世界に420万tの雨が降る・・・・


 岡崎京子が「リバーズエッジ」で繰り返していた言葉・・・それは楠本マキと同じようにゴダールに影響された彼女らしい、言葉と映像との絡まりあいの中で生かされたいくつものワード。輝いたり、響いたり、そっと触れたり、時に僕らの中の、外の、荒れた都市のような記憶の荒野を走り抜け、ふくらみ、しぼみ、明滅していくような・・・そんな連鎖反応をパっと引き起こしてくれた言葉に・・・・・・




    僕らの短い永遠



             ・・・という言葉が、あった。



 僕たちは想像し続けることができるだろうか?今も降りつづける雨を。黒く塗れ、侵食されていく朽ちたコンクリートを。一万杯の飲まれ行く紅茶。無数の食べ物。吸い込まれ、吐き出される50億の生暖かい空気。その一つ一つの匂い。生まれつづける子らの声。どこかで、誰かがあげる嬌声。性の喜びの声。また、その悲しみの涙・・・・・
 


 目を閉じて、思う、世界は、ココにない。



     暗転(フェードアウト)

 
 一秒で起きている事。この世界のすべての、一秒の動き、関係性、総体の相対性。ミクロな、マクロな・・・・あらゆるモノの絡まりあい。僕らは「それ」らから切り取られ、忘れ去られ、置いてきぼりをくらい続ける。いつも、常に、遅れ、ただ圧倒される。重要なのは世界がとてつもなく巨大で茫漠としているのではなくて、僕ら人類という生物の知覚系統が進化において必要として揃えた器官のスペックが世界に対して矮小であるというだけの事実にすぎない。もちろん、知覚系統は生物によって複雑化しながらも徹底的に必要最低限に簡略化されているのだけれど。

 意識が所与として、まとまった、統覚としての諸所の感覚イメージや内的対話言語として、ちっぽけな丸い骨とその内部の肉の神経線維の複雑な空隙(ニューロン)の間の電気信号と科学物質の明滅から立ち上がるとき、それは与えられた感覚から情報へと生成する瞬間であり、生成された意識自身は、意識を生成しているシステムの無意識的な、もしくは下意識的な構造そのものを意識することはできないだろう。

 意識を生成するシステムとは、情報を、世界というシステムと、システムの関係性の総体の記号的な置き換えの伝達を行うことによってそれを生成するが、その役割のほとんどが情報の削減であり、複雑性の除去にある。僕たちが生き、思考し、僕たち自身を再生産しつづけなければいけないことに、この社会と世界に依存しなければいけない以上、僕たちは・・・・いや、生産された意識だけの・・・膨大な必要のない情報を削り取った残りかすとしての意識としてしか、存在できない僕ら・・・・は、・・・・物自体から疎外されることが「僕ら」の存在理由なのではなく、存在を生産するシステムの構造性によって規定された不可欠な要因であることを認識する。

 1秒の、たった1秒の・・・僕らの短い永遠。



 1秒の世界すべてを知覚すること、認識することの、絶対的な不可能性とその神秘。僕たちの愛すべき僕たちの矮小性と、世界の尊大性。



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