カラカス第六回世界社会フォーラム

小倉利丸氏による、フォーカス・オン・ザ・グローバルサウスのウォルデン・ベロとマリ・ルー・マリグによるカラカスWSF報告の翻訳(仮訳)です。

世界の最前線がどんなに変わってきているかは、なかなか日本のメディア環境にいると分かりづらいものです。でも、こういった貴重な情報を共有出来ることは、少しは〈共=コモン〉な状況を作れるかなと。


中南米の中道左派政権やヨーロッパの赤緑黒やアジア全域の新しいムーブメントが、世界的に大きな動きを起こしていることが、このアメリカ情報管制下でも少しは伝わるかな。
僕は正直、この変革の時代(同様のレポート番組がNHKでありましたが)に生きることが出来てラッキーって思ってます。世界の学生が燃えた68年よか今の方がダイナミックで楽しい☆

いつか世界社会フォーラムに行ってみたいもんです。

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カラカス第六回世界社会フォーラム:グローバル市民社会のカンフル剤
ウォルデン・ベロ、マリ・ルー・マリグ

ヴェネズエラのカラカスで開催された第六回世界社会フォーラムは、このグローバルな市民社会の年一回の会合が必要としていたカンフル剤となった。 WSFは、目に見える方向性や目的を出せずにこれまでのフォーラムの議論の繰り返しにすぎないではないかという厳しい非難——幾人かの主要な創設者からのものもふくめて——が投げかけられてきた。

カラカスでは、セミナーやワークショップでの議論がこれまでの会合にくらべて、より切迫した雰囲気となった。52000人の参加者は落ち着いた雰囲気のポルトアレグレとはまったく違った雰囲気のなかで七日間を過ごした。ブラジル有数の富裕な地域に位置するポルトアレグレとは対照的に、カラカスは、貧富の差がはっきりとしていてエリートや中産階級が出入りする贅沢なショッピングモールとごみごみしているが活気に満ちた貧民街や都市周辺の山岳地帯に建ち並ぶ牧場労働者の住居、非常に便利な地下の大量輸送システムと救いようのない地上の道路の渋滞が併存し、暴力犯罪の割合が高く、参加者がじかに路上強盗に遭遇した数も少なくない。

カラカスは、ヴェネズエラの石油の富との関連でみると、「理解することのなかなか難しい」第三世界であり、わたしたちが議論してきた社会問題やエコロジーの問題の多くの側面をいつもわたしたちに思い起こさせた。

ラディカルな雰囲気

しかし、今回の社会フォーラムでは、すがすがしい雰囲気という以上のものが多くを占めていた。いたるところに大統領フーゴ・チャヴェスに対する大衆の非常に高い同志的な愛着を示す証拠があり、商業マスメディアは膨大な数のチャヴェス批判の記事を載せ、チャヴェスタ革命のトレードマークである赤いベレー帽を被った兵士がどこにでもいるという、劇的な変化の過程の渦中に参加者は投げ込まれる。見過ごすべきでないのは、低所得層のベネズエラ人たちの大統領への明確な愛情であり、これは大量に生産され消費されているチャヴェスのTシャツ、チェアヴェス時計、押すと「ボリヴァリアン・革命」と叫ぶチャヴェス人形といった形をとって表れている。

同様に、わたしたちは米帝国に反対して闘う最前線にある国にいるという感覚に抗うことはできなかった。ヒットラー鬚のジョージ・W・ブッシュと「暗殺者ブッシュ」という文字が印刷されているポスターがいたるところに見られた。そして事実上の主賓となったのがシンディ・シーハンだった。彼女は、昨年夏にテキサスのクロフォードにあるブッシュの農場の外でキャンプを張って大きな注目を集め、合州国の平和運動を再度盛り上げた女性である。イラクで息子を亡くしたシーハンは、合州国議会での米国大統領による「合州国の現状」に関する演説を阻止するためにワシントンDCへ向かう前に、チャヴェスが毎週ホストをつとめるテレビ番組で、ブッシュを「テロリスト」呼んで厳しく糾弾してフォーラムとこの国をあっと驚かせた。

主役のチャヴェス

もちろん、チャヴェスは、参加者とのいくつかの公開あるいはプライベートなイベントのホストをつとめてフォーラムの開催期間中の主役だった。ブッシュを「Mr.Danger」と呼び、ポリエドロ・スタジアムの15000人の喝采を叫ぶ聴衆に向かって「かの帝国は全能ではない。」と語り、「我々は今世紀中にあの帝国を打倒するであろう」と予言した。あらゆる機会をとらえて、彼はわたしたちに、米国のラテンアメリカ問題への介入の長い歴史、米国によるキューバ孤立政策、そして2002年にチャヴェスに対して画策された失敗に終わったクーデタにおける米国の役割を想起させた。

これは、フォーラムをとりまく戦闘的な反帝国主義的な精神に抗いがたいという意味において、政治化されたフォーラムであったことはまちがいない。明らかにこのことは一部の参加者たちには退屈だっただろう。疑うまでもなく、チャヴェスタは、カラカスで開催されたWSFによってヴェネズエラのプロセスについての真実が国際的に示され、彼らの信じるところによれば、チャベスをやっつけようと躍起になっているワシントンを中和するためのより多くの同調者を結集するプラットフォームを獲得したといえるかもしれない。驚くことではないが、ヴェネズエラ政府はビザの援助、空港からカラカス市内への無料送迎バス、 WSFのバッチを身に着けている人全員に無料の地下鉄乗車を提供するなどフォーラムを全面的に支援した。

他方で、チャベスとフォーラムの主催者の間に若干の摩擦があったが、政府がこのフォーラムの議題やその内容を決めるうえで尽力したことでクレームがつくことはなかった。フォーラムが組織化されていない膨大なエネルギーに翻弄されたということがあったとしても、これは政府に操られたイベントではなかった。

オルタナティブをめぐる論争

現在のグローバルな資本主義システムに対するオルタナティブの問題は多くのワークショップやセミナーで議論された。チャヴェスは躊躇することなくこの論争にとびこみ、彼は、ヴェネズエラにおいて彼が建設しようとしているのは「社会主義」であると率直に宣言した。社会主義という概念は古いソヴィエトや東欧に広く普及したシステムだとみなすような参加者からの共鳴はえられなかった。また彼がマルクスやローザ・ルクセンブルクが「社会主義か死か」と言ったと主張したとき、彼らはそんなことは言っていなかったわけで、余計に心証を悪くした。他方で、チャヴェスは彼が「社会主義は20世紀最大の失敗のひとつであった」と主張し、彼の企てを「本物の社会主義」「キリスト教社会主義」「ラテンアメリカの社会主義」として述べるときには、彼の計画を彼の非常に近しい友人であるフィデル・カストロのそれと距離を置こうとしているようにも見えた。

もっと刺激的だったのは、非識字をなくすための大規模な全国的な短期集中学習コースの設置、キューバの医師を先頭とするコミュニティ・クリニックの設置や土地改革などチャヴェスの短期的中期的なプログラムに関する議論だった。また、魅力的だったのは、ALBAプロジェクト——「南北アメリカ大陸におけるヴォリヴァリアン・オルタナティブ」——の第一段階についての彼の議論だった。彼のペトロカリブ・イニシアチブでは、ヴェネズエラから石油を輸入しているカリブ海の13の諸国は石油の国際価格から40%の割引を受ける。ペトロスール・プロジェクトでは、ボリヴィアは大豆を、アルゼンチンは家畜をベネズエラの石油と交換する。こういった交換「資本主義の論理を越えるものだ」と彼は強調した。

チャヴェスの挑戦とわたしたち

たぶん、チャヴェスの世界社会フォーラムに対する主要な貢献は、行動へのなんの提案も持たない観念的な単なるフォーラムになる危険を警告して、このフォーラムに挑戦したことだろう。彼はまた参加者たちに、権力の問題に取り組まなければならないということを語った。「我々は<対抗的な権力 >の戦略を持たねばならない。我々、社会運動や政治運動は、地方、国、[国を越えたラテンアメリカといった]地域レベルにおける権力の場に移動できなければならない」と語った。

しかしながらこの率直な話には二面性がある。わたしたちの幾人かはチャベスに、昨年11月に南北アメリカの自由貿易を事実上破綻させた歴史的なマー・デル・プラータ会議で彼に与えられた栄誉に安住しないように彼に要請しつつ、貿易問題で議論を挑んだ。WTOは、それ以上の危険はないとはいえ平等を要求して彼に警告を発していた。わたしたちは、彼に、12月の香港閣僚会議で到達した合意にたいして公式に「留保」を表明したことに謝意を表しながらも、それだけでは不十分であり、わたしたちは、ここ数ヵ月以内にジュネーブで明らかになるであろう合意、つまり途上国の経済に深刻な脅威を与えるグローバルな政策に基づく話合いを失敗に終わらせること——たとえそのことが、隣国ブラジルの思惑を無にすることとなろうとも——にヴェネズエラが協力することを大いに期待していると述べた。

運動を元気づけるもの

一週間でも短すぎると感じる程雰囲気は盛り上がった。ヴェネズエラだけでなくラテンアメリカ全体にたくさんの人を魅了するものがあるという印象を抱きながら帰途についた。新自由主義に反対するラテンアメリカ大陸全体規模での革命が進行中であり、そのもっとも最近の兆候が、インディオの末裔でラディカルな農民運動の指導者でもあるエヴォ・モラレスのボリビア大統領選挙での勝利だった。

カラカスは、失速する危険にあった世界社会フォーラムのプロセスにとって、これを元気づけるものとなった。それは、わたしたちの側の勝利は、骨の折れる闘いと大きなリスクという代価を支払ってのみ手に入れることができるという事実を強く印象づけた。合州国と地方の寡頭政治の手に負えない同盟によって常に脅威に晒されながら、チャヴェスと彼の支持者たちは、ヴェネズエラとラテンアメリカの社会を変えるための可能性を獲得するために、WSFのスローガンである「もうひとつの世界は可能だ」を実行に移すために、闘いつづけている。

*ウォルデン・ベロとマリ・ルー・マリグはフォーカス・オン・ザ・グローバルサウスのスタッフである。


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  • By intellipunk / Feb 05, 2006 12:50 pm

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