回心-資本教と怠惰教の間で
▼労働者の教理問答
問、― おまえの宗教はなにか。
答、―「資本教」です。
問、―「資本教」はおまえにどのような義務を負わせているのか。
答、―主要な二つの義務、つまり、権利放棄の義務と労働の義務です。わたしたちが共有すべき母なる大地と、大地の胎内の富と、地上の豊穣と、太陽の熱と光の神秘の恵みの所有権を放棄を命じます。―肉体労働と頭脳労働の所有権の放棄を命じます。―これはさらに、わたし自身を所有する権利の放棄をわたしに命じます。ひとたび工場の門をくぐるや、わたしはもう自分のものではなく、雇主の物になるのです。幼年時代から死ぬまで、働くこと、太陽の下でもガス燈の下でも働くこと、つまりいつでもどこででも働くことを、わたしたちの宗教は命じます。
問、―おまえの神は全能なのか。
答、―そうです。これを占有すれば、地上の幸福ことごとくが手に入ります。ある一家やある国家からこれが顔をそむけると、それらは悲惨と苦悩にうもれて味気なく生きていかねばなりません。「資本神」の御力は、量が増えるにつれて大きくなります。
問、―「資本神」に選ばれた者とはだれか。
答、―雇用者、資本家、金利生活者です。
問、―おまえの神、「資本」は、おまえにどのような報いを授けるのか。
答、―いつでもどんな時にも、妻や幼い子供やわたしに仕事をくださることによって。
問、―神はどのようにおまえを罰するのか。
答、―失業を科することによってです。そうなるとわたしは破門され、パンも葡萄酒も火も取り上げられます。妻子も飢え死にすることになるでしょう。
問、―どのような罪を犯せば、失業の破門をうけねばならぬのか。
答、―なんの罪でもありません。「資本」の大御心から失業を給り、われわれの脆弱な知性では、理由がわかりません。
問、―おまえの祈祷はどのようなものか。
答、―言葉では祈りません。労働がわたしの祈祷です。口に出す祈祷は、労働という霊験あらたかな祈り、大御心にかなうただひとつの祈りの邪魔になります。なぜなら、それが「資本」の得になる、余剰価値を産み出す唯一のものだからです。
ポール・ラファルグ『怠ける権利』「資本教」より
資本神様、こんなボクにも仕事をくださり、ありがとうございます。「河原貴族」を自称して失業特権を甘受しながら7ヶ月もの間怠けた生活を送っていたボクを見捨てずにいてくれた大御心に魂が震えるほどの感銘を受けましたので、ここに回心いたします。
懺悔させてください。失業中、自宅を「カフェ・タンジール」などと名づけ、ポール・ボウルズ気取りのインチキ回教趣味に浸っていました。さらに偶像崇拝が禁じられている回教にあって、怠惰教という邪教を崇拝し、カール・マルクスの義理の息子で黒人リーゼント戯作野郎ポール・ラファルグの肖像を部屋に奉り、「怠ける権利」を正当化していました。これは資本教と回教に対する二重の罪です。神様どうかお許しを。
これからは資本教の教えに従って生きていきます。手始めにまずポール・ラファルグを神棚から引きずり下ろし、ゴミ箱に磔り付けの刑にしてやりました。賃金の奴隷である人間を糞袋呼ばわりしたポール・ラファルグがゴミ箱に。これでひとつ頓知の利いた商品が完成しました。これからも資本神様に喜んでいただけるような商品を開発することで、資本教の布教に努めます。
ハーポ・プロダクション製「ポールの糞箱」 オープン価格 イラスト KENTA UEOKA
- HarpoBucho
- By harpobucho / Nov 17, 2009 1:50 pm