ageha嬢の変態ダンス
前回、アゲハ蝶の幼虫のことを書いたときにふと疑問に思ったのは、彼女はアゲハ蝶に変身する可能性を内に秘めているかもしれないが、少なくとも現時点ではアゲハ蝶ではない。芋虫だ。なのにアゲハ蝶の幼虫と呼ぶのはなにか間違ってはいないだろうか、ということだ。雌雄どっちがわからないのに「彼女」と呼んでいるのもおかしいがそれは愛嬌。
アゲハ蝶になるという目的のための準備期間として幼虫を捉えることは、政権を奪取するための手段として闘争運動を組織する古い左翼みたいでよくない。だから、「アゲハ蝶の幼虫」とか「アゲハ蝶のさなぎ」と呼ぶのはやめて、とりあえず「ageha嬢」と呼んでみる。卵→幼虫→さなぎ→成虫と生成変化していく完全変態の過程そのものを生きるのがageha嬢である。
前回の日記では、モンキアゲハの幼虫との判断をしたが、いや、あれはナミアゲハではないか、とマイミクrikkiさんより指摘を受けた。そのときは確かにそうだ、目玉模様のあいだの幾何学模様がモンキちゃんだ、と納得したが、今は違う。この後、いったい何に変身するかまったく予想がつかない。会田誠の作品のようにさなぎを破ってキャバ嬢が出てくるかもしれない。われわれは今、空からオタマジャクシが降ってくるような魔術的な時代を生きているのだ。
と前置きが長くなったけど、サンショウの葉がなくなるのが先か、幼虫がさなぎに変態するのが先かのギャンブルは、その日記を書いた翌日、あっさりと勝負がついた(どっちにも賭けてないけど)。あんな日記を書いたものだから、気を使った彼女はサンショウの葉を三分の二残して、さなぎへの準備を始めた。居候の身分をわきまえたいじらしさに胸がキュンときた。
さらに一晩経つと完全にストーン状態。
その数分後、驚くべきごとに彼女は踊りだした。ヘリコプターのノイズにあわせて身体をくゆらせ、過去の衣裳を脱ぎ捨てた。まるでストリッパーのように。
ageha嬢は今、安定期。
彼女のダンスが意味するものについては、ちゃんと考察する必要があるだろう。『古事記』におけるアメノウズメノミコトのストリップ・ショーから始まり、江戸時代の「おかげまいり」や「ええじゃないか」に至るまで、日本には変革期における熱狂的かつエロティックなダンスについての長き伝統があるのだ。
- HarpoBucho
- By harpobucho / Jun 18, 2009 2:27 am