真夜中に蛾を殺す。

さっき異様な光景を見た。まだ動揺している。

22時半に仕事を終わらせ、いつものように青梅街道を自転車で走っていた。今夜は新宿OPENで「光るヨーグルト」をやってるので、ちょっと踊っていこうかな、とも考えたが、久しぶりに朝からの労働でヘトヘトになっていたので家路を急ぐことにした。

中野坂上の手前の道は暗くて人通りが少ない。前方に人影がある。一人は横たわっていて、そのすぐ近くにもう一人が突っ立ている。友達が酔いつぶれたのかな?と思いながら、自転車で通り過ぎたわけだが、どうも様子が変だ。心拍数が急激に上がり、通り過ぎてからも現実を確認するために3回振り返った。その後猛スピードで自転車を漕いだ。決して後ろを振り向くな。

ボクが見た光景はこんな感じだ。倒れている男の頭は真っ赤に染まり、頭部の周りにはかなりの面積の赤い海ができている。ハッパネタとエロを目的に立ち読みした『BURST』で偶然に開いてしまったコロンビアの死体写真とまったく同じ光景。

まあ、百歩譲って、死体は珍しくない。人は必ず死ぬ。故に死体が道端に転がっていてもおかしくはない。死体や狂気など、人間の生の部分を隠蔽してきたのが近代だが、ときにはそれが剥き出しになることもある。ボクが震撼したのは死体(と決め付けているが)ではなくて、死体の前に突っ立っている男の存在である。3回目に振り返ったときにその男と目があったのだが、いたって普通の顔をしてるのだ。感情のない顔。まるでバス停でバスを待っている朝のサラリーマンの顔。彼は何者か。殺人者なのか。

疲れによる幻覚であって欲しい、あるいは映画の撮影かなんかであって欲しいと願ったが、あれはゼッタイにリアルだ。昨晩の出来事を思い出した。

昨晩寝る前に巨大な蛾を殺した。どこから入ったのか、家の中に10センチ近くある巨大な蛾が毒粉を撒き散らしながら、恐ろしい羽音を立てて暴れまわっていた。ゴキブリと蚊以外の殺生は基本的にしない主義だが、ここは奴を殺さない限り、安眠できない、と思い、殺しを決意した。

真夜中に蛾を殺すというのは、なんだかエロチックな行為だ。こんなことを書くと頭がおかしいと思われるかもしれないが、蛾は蝶よりも肉付きがあり、セクシーなのだ。毛皮のマリーみたいに。殺虫剤で弱らした後にコンビニ袋に閉じ込め、トドメを刺す。潰すのは躊躇した。腹部から漏れる体液の色が怖かった。毒殺しよう。コンビニ袋の口に殺中剤を入れ、勢いよく噴射した。ボクは蛾を殺した。

さっき見た死体は昨晩の蛾の分身なのか。そしてあの男は・・・・


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  • By harpobucho / Sep 29, 2006 4:41 am

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