江戸とキングストン
ここ5日ほど、連日、オランダ人のようなライフスタイルを繰り返してたので、社会からプチ・ドロップアウトしてしまった。今朝、起きたら11時。社会人失格だ。ボクが植木等だったら、のこのこ昼過ぎに出勤して、大遅刻を咎める上司に「そんな堅いこと言いなさんな、ガッハッハ!」とかますところだが、ボクにはまだスーダラ度が足りない。とりあえず職場に電話して巧妙な話術で今日一日の労働からの解放を勝ち取った。有休ってやつね。
ちょうど休みたかったのだ。やることがあった。昨年の「平岡正明のDJ寄席」のテープ起こし。最終回、サウンドデモなど都市における音による抵抗について話して下さい、っとボクは平岡さんに頼んだつもりが、なぜか江戸時代の町火消の話から始まった。しかし、これは全く正しかった。
「火事と喧嘩は江戸の華」と謳われるように、町火消は江戸の町を象徴する職業だ。いや、単なる職業ではない、江戸で一番粋なライフスタイル。かっこよくて危険で女にモテモテだったらしいよ。ボクの中では火消ってのはルードボーイ的存在。「発砲と野外ダンスはキングストンの華」ってか。
ピーター・トッシュは火消の衣装、刺子半天を好んで着ていた。背中には「一番」、襟には「組頭」。「一番」ってのはチーム名。いろは48組のチームを一番から十番までの大組に分けてる。「組頭」ってのはポジション。一番偉いのが「頭取」その次が「組頭」。つまり、こーゆーことだ。トッシュは考える。オレのバンドは確かに一番だ。しかし俺自体は二番目の存在だ、一番偉い頭取は、オレの音楽を支持してくれる民衆のためのポジションなのだ。サパティスタ民族解放軍におけるマルコス副司令官と同じロジック。
火事場における町火消の振る舞いってのは、まさにサウンドクラッシュだ。いくつものチームが消し口を争い、威信をかけて、激突する。必然的に喧嘩になる。大名火消や定火消などバビロン側が相手のときは、火事以上に戦意が燃え上がる。身分が関係なくなる火事場は、封建社会の中にあって、町人(ルードボーイ)があからさまにバビロンに武力で反抗できる唯一の場なのだ。
ピーター・トッシュがどういった経由であの衣装を手に入れたかわからないが、あまりにハマり過ぎている。使命のために命を張れるかっこよさっという点で、まさにトッシュは江戸の町火消だ。トッシュは火を付ける方だけどね。解禁せよ!彼は火消についての知識が全くなくて、抵抗者としての勘だけであの衣装を身につけている、とロマンチックなボクは考えたいのだ。
火消とトッシュのことを考えていたら、今日もまた火を付けそうになったので、慌てて消火した。江戸とキングストンがボクの脳内で交差した。だからどうしたって?
SO WHAT ?
- HarpoBucho
- By harpobucho / Feb 23, 2006 1:48 pm