無頭人(acephale)
アンドレ・マッソンの筆による、右手に燃える心臓、左手に刀、腹部に迷宮、性器にスカルをもつ無頭の怪人「アセファル」のデッサン画が、「明かしえぬ共同体」(byブランショ)のタブーを破ってTシャツ化!
「アセファル(無頭人)」とは、1937年にフランスの思想家ジョルジュ・バタイユがオーガナイズした神秘主義的要素の強いゴス集団であり、ニーチェ哲学を核とした反キリスト教的秘密結社でもある。そして結社とともに雑誌『アセファル』も創刊された。
創刊号に掲載されたグループのマニフィスト『聖なる陰謀』には「政治の顔をしていたもの、そしてみずからが政治的であると想像していたものは、いつの日にか仮面を脱いで宗教的運動であることを露呈するだろう」というキルケゴールの一節が引用されている。その言葉の通り、バタイユは直前にオーガナイズしていた左翼急進組織「コントルアタック」の挫折から、この異教集団へと急旋回したのだ。当時欧州は、ナチスが台頭しスペイン内乱寸前というキナ臭い時代。ファシズムの不安にバタイユは敏感に反応したのだった。
アセファルは、無頭というその意味が示すように、ニーチェを援用した神の断首による、前代未聞の神が不在の宗教であった。しかし内実は、秘密の誓いのため明かされていない。インタビューでアンドレ・マッソンは「ミシェル・レリスは周辺にいただけだと言うし、ピエール・クロソウスキーもまたそう言っている。パトリック・ヴァルドベルグは問い糾しても言うことはないというでしょうし、ロジェ・カイヨワは沈黙を守っている」と語り「秘密結社などではない」と仄めかし「雑誌『アセファル』が出たじゃないか」と嘯く。世界最大の秘密結社フリーメーソンのスタイルを転用したとされ、メンバーと目される錚々たる思想家やアーチスト達(日本人では岡本太郎がいた!)は、口を固く閉ざすかバタイユに裏切られたと罵倒するだけだ。噂では、人身御供を企て、官能と背徳のタナトスを通じて秘儀の共同体を謀るつもりであったらしい。バタイユはシャーマン役を希望したり、狂気の恍惚を目指して自ら供物となることを望んだという噂もある。しかし歓喜を見る前に戦争の恐怖が現実化し、集団は瓦解する。
人間を絶対的に断定し熱狂させ動物的に従わせる、究極の統治システムであるナチズム。アセファルは、総統を頭にいだくナチへの痛烈なアンチテーゼでありながら、バタイユはファシスムの熱狂的魅力「呪われた部分」に惹かれることを自覚していた。RLLは、アシッド・キャピタリズムのフェティッシュな「呪われた部分」に魅せられながら、最新統治システムであるネオリベに対抗する。「人間の動物化」が進む昨今、コジェーヴの「歴史の終焉」への抵抗をアガンベンは「アセファル」に読み取っている。我々は、消費者にサクリファイス(生贄)としてTシャツを捧げ、ネオリベを茶化した明かしえぬ共同体を企てるのだ。
ボディの色は白。資本主義に戦慄のサクリファイスを食らわせろ。