読書

左翼でもプロ市民でもない君が、反原発運動を始めるには?

ここに引用する文章は、今から21年前、1990年に出た本からだ。その本のタイトルは「NO NUKES! YES ROCK!」この序文のタイトルは、「生き残る!」だ。

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「生き残る!」

まったくとんでもない時代にブチ当たっちまったもんだぜ。こんな、狂気のような、核と原子力の正体を知ってしまってからというもの、どんなスゲエ映画を見ても、どんなにカッコいい音楽を聞いても、もはや以前のようには胸が踊らないし、血も騒がない。夢中になんかなれなくなっちまった・・・・・。何も面白くねえ!

心のどこかでいつもビビってるからだろう、すべてが終わる日を。巨大な火柱が立ちのぼり、黒い雨が降り、犬や猫が狂い、街中に悲しみがあふれ、歯茎から血を流し、紫色の斑点にまみれて大事な人が苦しみながら死んでいく日が来ることを。

ちくしょう!なんという世の中だ!いったいどうして俺たちはこんな思いをしなければいけないんだ?どうして苦痛と恐怖を強制されるんだろう?おれたちのまったく関係しないところで準備され、造られ、ガードされている原発。誰も望みやしないのに。そこに存在しているんだ・・・・ カネも力もねえおれたちには、とても変えようのねえ現実。

できることなら忘れ去り、知らんぷりして一生メデタク暮らしたい。だけど、そんなことはいまさら無理な相談というもの。自分の心に嘘はつけない。いくら目をそむけてみたって、この現実はおれたちの前から消え去ってくれたりはしねえんだもんな。それならば、いっそのこと正々堂々と正面を向いて、目の前のバケモノと戦っていこう、そのほうがよっぽど精神衛生上もマシだぜ! そういう考えの仲間のためにおれたちはこの本を書いた。
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「NO NUKES! YES ROCK!」より

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この本は、反核、反戦のアクションを起こすためにロック・ファン(特にパンクス)5人が集まってできた小さなグループの、反核運動マニュアルだ。行き詰った左翼セクトや、ダサい市民グループ(プロ市民?)の運動とは無縁の若い5人が、「ワープロ、パソコン、FAX、カセット、コピーマシン、NTT、電気」という身の回りにあふれるガジェットを使って、原発と戦うためのノウハウ(もちろん、非暴力で!)を、これでもかと、たっぷり詰め込んだのだ。

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その内容を簡単に紹介すれば・・・・  公衆電話の説明書や、路上の標識を落書きでイジくり、反核メッセージへと変えてしまう、アドバスター的手法。まるであのバンクシーを20年も先取りするかのように、街中に反原発の宣伝を撒き散らす、グラフィティやステンシルの爆弾を作り出すノウハウ。ワープロや縮小コピーを駆使して作り出す、ミニコミやフリーペーパー。カセットにラジオ番組のように、自分の好きな音楽とともに、反核のメッセージを吹き込み、友人に手渡す、ミックステープ。デモ申請や、横断幕、プラカード、メッセージTシャツの作り方。今となっては懐かしい?NTTのパソコン通信や、伝言ダイヤルを利用してのネットワーキング。反核ロックフェスの企画方法や、原発企業へのボイコットなどなどだ。

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何よりこの本に共感できるのは、少人数の気の合う仲間が数人いればいいってメッセージだ。どれだけの左翼や市民グループがクソな内ゲバや権力争いで運動を潰してきたかは、歴史をちょっと振り返ればすぐわかる。党やデカイ組織なんていらない。

「個人がいて、小さなグループがあって、アクションを支える心があれば、それで強力に戦っていける。どこかで誰かが何かを始める。それが共感できるものならば、それをみんなで徹底的にバックアップする。ふだんは知らない人でもいい。戦うときはみんな仲間だ。集会や大会なんかくだらない。デカイ団体に入っても理屈や人間関係に追いまくられてしまってどんどん疲れがたまっていく。戦う前に倒れてしまう。これじゃなんにも意味が無い」

「オレたちはまったくの新世代だ。いつもはやつら(権力)の目には見えない。必要なときだけ現れて、思いっきりパンチを食らわしたら、すぐにまたフッと姿を消してしまう。次には背後に現れる。あるいは小さくたくさんに分かれてグルっと取り巻いて動けなくする。組織じゃできないやり方さ。個人や小グループはこうやって戦う。さあ、小さなグループや個人的な仲間を作ろうぜ。そして、自由な行動を始めよう。自分たちの思いつくままに素直に動こうという態度が大事さ。そして、もちろんほかの人の言葉に共感できるような心も忘れるんじゃないよ。小グループのメンバーは人数としては3、4人がいいな。最初はそれで十分だと思う。あとは自然にやっていけばいい。続けるやつは続けるし、やめるやつはやめていくだろうから。」

「とにかく、仲間を作りな。ひとりでいるより絶対マシだって。世の中、狭いようでいてけっこう広いぜ。探してみればあんたみたいなヘンな仲間?がきっと見つかるハズなんだから。」

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運動のコツは楽しむこと。無理をしないこと。背負いすぎないこと。状況は最高にシリアス。だけど、それを笑い飛ばして、少しずつ、一歩一歩前に進めればいい。「明日、世界が滅ぼうとも、今日、私は、リンゴの木を植える」ルターの言葉だ。



RLL 2010′S BEST BOOKS

2007年2008年2009年と例年恒例でしたが、今年はなかなか混戦しまして、ようやく一月末日になってしまった!(ハーポ部長お大事に)


RLL 2010′S BEST BOOKS

1 不可視委員会『来るべき蜂起』彩流社
http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-1480-9.html
http://daigakuseishiwomaku.blogspot.com/search/label/%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E8%A6%96%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A
http://blog.livedoor.jp/dailytakadanobaba/archives/cat_22122.html
なんとかフェスの最中にハンモックに揺られて読んで、脳みそを揺らされた、2010年の切迫感を代表する一冊。財政破綻をおこしつつ移民と共存しているEU諸国の若者のリアリティにシンクロ。革命でも社会運動でも暴動でもなく、蜂起なのだよ!ジョルジュ・アガンベンをも刮目させるジュリアン・クーパとは何者なのか?! 斜陽する日本の黙示録として読むこともできるポスト・シチュアシオニストの必読書。


2 フランコ・ベラルディ(ビフォ)『NO FUTURE イタリア・アウトノミア運動史』洛北出版
http://www.rakuhoku-pub.jp/book/27125.html
フェリックス・ガタリや粉川哲夫氏などから伝聞でしか伝えられなかった、伝説のイタリア・アウトノミア運動史が、その当事者から語られる。しかも 2010年の日本の読者へ向けアップデートされた形で。パンクとポスト構造主義が混ざりあった「未来のことなんて心配するな、そんなものはないのだから」など名言多数。ビフォの80年代NYでのバロウズやラメルジーやバスキアとの交流を明かした廣瀬純のインタビューは出色!!


3 マイク・デイヴィス『スラムの惑星 都市貧困のグローバル化』明石書店
http://www.akashi.co.jp/book/b66975.html
http://urag.exblog.jp/10673798/
私たちの同時代に、絶望的な都市環境を生きる圧倒的な人々がいるという現実を突きつけられる。第三世界都市や先進国のインナーシティが羅列され、微細にその窮状が描写され続けると、マジックリアリズムともいえそうな不幸な惑星が浮かび上がる。スラムの記述は量から質へ転化し、世界認識が刷新された圧倒的読書体験、バッドトリップなサイケ。ジジュクをも大儀へ駆り立てた、惑星規模の変化は見過ごせない。祝 明石書店労働争議の組合側の勝利的和解!これで続編の『マジカル・アーバニズム』の出版が進むといいな。


4 春日太一郎『天才 勝新太郎』文春新書
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166607358
映画作家としての勝新太郎を初めてちゃんと描いた一冊。タイトルが潔い。在りし日の撮影所システムの内幕を掘ってくるフィールドワーカーとしての才も素晴らしい。「千里の道を行き、万巻の書を読む」とは勝新の座右の銘。


5 佐々木中『切りとれ、あの祈る手を』河出書房新社
http://www.atarusasaki.net/book_schneid.html
出版された瞬間にRLLがTシャツを発売しようと決めたのは、すべての革命はのるかそるか! その革命をアジテーションするのは、熱を帯びた文学への信仰告白。ルター、ニーチェ、ルジャンドル、ウルフ、ミラーその渋過ぎるディガーぶりもリスペクト。文学には疎いけれど、僕らも革命と本を切結び読んでいた。次作はドゥルーズ&ガタリのようなので早く読みたい。


6 ステファヌ・ナドー『アンチ・オイディプスの使用マニュアル』水声社
http://www.suiseisha.net/blog/?p=1176
著者にカフェ・ラバンデリアで逢ったらとてもナイスガイ。児童精神科医らしくひとりひとりに向き合ったサインには、皆にちがうメッセージの入った長い手紙が書いていました。「僕のこの本が貴方達のTシャツのよいアイデアになるといいね!」だって。


7 フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス草稿』みすず書房
http://www.msz.co.jp/book/detail/07514.html
その『アンチ・オイディプスの使用マニュアル』のナドーが編んだガタリのぶっ飛んだ草稿。近年の『三つのエコロジー』文庫化、『ドゥルーズとガタリ 交差的評伝』から続くガタリ・ルネサンス!(まだ詳しく云えないけど今年もガタリの本が出ますよ)「享楽には不安定な書きなおしがある。コードの過剰価値の潜在性のきらめきだ。容赦ない法を逃れる千分の一秒の享楽。」よくわかる数少ないガタリの口寄せ。


8 ミシェル・レリス『幻のアフリカ』平凡社ライブラリー
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=76_705
http://heibonshatoday.blogspot.com/2010/07/79.html
最近見過ごされがちな、戦間期のフランスの思想家達に傾倒を強めているぼくら。そこでアセファル周りをバタイユ以下を再度探索中。ロジェ・カイヨワ、ピエール・クロソウスキー、ミシェル・レリス、ジャン・ヴァール、そしてブルトン、アルトー、…そこでタイミングよくレリスの代表作が文庫化!ジェームズ・クリフォードの民俗誌的シュルレアリスムを触発させるレリスの妄言!サイコロみたいな造本も最高の一冊。


9 渋谷望『ミドルクラスを問いなおす 格差社会の盲点』NHK出版 生活人新書
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=0130&webCode=00883262010
あの名著『魂の労働』から7年、渋谷さん待望本書!最近の重要タームであるコモンズやベーシックインカム、ショックドクトリンやジェントリフィケーションやハイパーメリトクラシーを新書的に分かりやすく紐解き、中産階級の負い目や成果主義や御用組合や競争社会といった泥臭い敵のロジックを赤裸々に明かす。この本でだいたいネオリベを覆う厚い雲の間から、未来の陽は見えてくるはず。


10 五所純子『スカトロジーフルーツ』天然文庫
http://bccks.jp/viewer/31679/1/A/VIEW
DOMMUNE「味平」でブレイク(?)した五所さんの初単行本! BCCKS天然文庫でいちばん読まれているんだそうで、しかしダウンロードして読むとどうなんだろうか。『マッサージ』に連載していた傑作連載「社会科見学」他、批評と文学の高次の融合。あとがき「追悼 五所純子」は横尾忠則死亡広告を想い起こす。



そのほかの2010年本

ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『千のプラトー 資本主義と分裂症』河出文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309463421

ジル・ドゥルーズ 『批評と臨床』河出文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309463339

ミシェル・フーコー 『ピエール・リヴィエール 殺人・狂気・エクリチュール』河出文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309463391

ルイ・アルチュセール、ジャック・ランシエール、ピエール・マシュレー、エチエンヌ・バリバール、ロジェ・エスタブレ『資本論を読む』ちくま学芸文庫
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480083005/

ルイ・アルチュセール『再生産について』平凡社ライブラリー
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=76_711

アルチュール・ランボー 『ランボー全詩集』河出文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309463261

『マイケル・ハートネット+川満信一 詩選』サウダージ・ブックス
http://saudade-books.blogspot.com/2010/09/blog-post_30.html

檜垣立哉『瞬間と永遠 ジル・ドゥルーズの時間論』岩波書店
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/X/0234820.html

松葉祥一『哲学的なものと政治的なもの』青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C5%AF%B3%D8%C5%AA%A4%CA%A4%E2%A4%CE%A4%C8%C0%AF%BC%A3%C5%AA%A4%CA%A4%E2%A4%CE

本橋哲也『格闘する思想』平凡社新書
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=85_554

上野俊哉『思想家の自伝を読む』平凡社新書
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=85_537
http://heibonshatoday.blogspot.com/2010/07/blog-post_15.html

平井 玄『愛と憎しみの新宿 ─半径一キロの日本近代史 』ちくま新書
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065551/

矢部史郎『原子力都市』以文社
http://www.ibunsha.co.jp/

白石嘉治『不純なる教養』青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C9%D4%BD%E3%A4%CA%A4%EB%B6%B5%CD%DC

ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミン・コレクション(5)思考のスペクトル』ちくま学芸文庫
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480093165/

スーザン・ソンタグ『私は生まれなおしている 日記とノート 1947-1963』河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309205540

ジャン・ジュネ『シャティーラの四時間』インスクリプト
http://inscriptinfo.blogspot.com/2010/06/625.html

マルク・デュフォー『ボリス・ヴィアンと脱走兵の歌』国書刊行会
http://www.kokusho.co.jp/kinkan/kinkan_200912.html

イーディ・ケルアック=パーカー『ジャックケルアックと過ごした日々』トランジスター・プレス
http://thisisradiotransistor.blogspot.com/

サイモン・レイノルズ『ポストパンク・ジェネレーション 1978−1984』シンコーミュージック・エンタテイメント
http://www.shinko-music.co.jp/main/ProductDetail.do?pid=0634047

日暮泰文『のめりこみ音楽起業 孤高のインディペンデント企業、Pヴァイン創業者のメモワール』同友館
http://www.doyukan.co.jp/store/item_046971.html

ビル・モーガン『アレン・ギンズバーグと旅するサンフランシスコ カフェとビートとロックとジャズの聖地巡礼ガイド』ブルース・インターアクションズ
http://bls-act.co.jp/books/2951

レベッカ・ソルニット『災害ユートピア』亜紀書房
http://akishobo.com/book/detail.html?id=467

スラヴォイ・ジジェク 『大義を忘れるな 革命・テロ・反資本主義』青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%C2%E7%B5%C1%A4%F2%CB%BA%A4%EC%A4%EB%A4%CA

スラヴォイ・ジジェク『暴力 6つの斜めからの省察』青土社
http://www.seidosha.co.jp/index.php?cmd=read&page=%CB%BD%CE%CF&word=%A5%B8%A5%B8%A5%A7%A5%AF

スラヴォイ・ジジェク『ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として』ちくま新書
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065575/

ジャック・ランシエール『イメージの運命』平凡社
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=702085

『VOL 04 特集=都市への権利/モビライゼーション』以文社
http://urag.exblog.jp/10489506/



intellipunk 2010年10冊

1 高祖岩三郎『死にゆく都市、回帰する巷』以文社(2010)
http://www.ibunsha.co.jp/
高祖さんの初エッセイ集。楼閣と巷を切り分ける思考嗜好に共振。高円寺のことをNYから記述されているように勝手に読んだわけで。装丁RLL intellipunk。現代思想書籍のお仕事募集してます。


2 ジョン・リーランド『ヒップ アメリカにおけるかっこよさの系譜学』ブルース・インターアクション(2010)
http://bls-act.co.jp/books/2912
この本に書かれたアメリカは好きなアメリカ(軍産複合体は嫌いなアメリカ)。最高にクールなアメリカ文化の教科書かバイブルか。片岡義男『ぼくはプレスリーが大好き』の様に読み継がれる一冊。装丁RLL intellipunk。サブカルチャー関連のブックデザイン随時募集してます。


3 クリスティアン・マラッツィ『資本と言語 ニューエコノミーのサイクルと危機』人文書院(2010)
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b66284.html
http://urag.exblog.jp/10743595/
http://www.honza.jp/senya/1385
この領域、つまりマクロ経済とかいってメルトダウンした国際金融資本主義を誤摩化すペテンに、ポストモダン左派として果敢に切り込んでゆくマラッツィについてくしかない!マイケル・ムーア「キャピタリズム マネーは踊る」の副読本にどうぞ。


4 市田良彦『アルチュセール ある連結の哲学』平凡社(2010)
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/viewer.cgi?page=browse&code=702089
http://heibonshatoday.blogspot.com/2010/09/blog-post_23.html
http://urag.exblog.jp/11309081/
ちくま文庫『再生産について』など再発があったりして、アルチュセール・ルネサンスが2010年は個人的におこったわけだが、その切っ掛けであり最大の収穫は本書。98年の現代思想『特集アルチュセール』で今村仁司さんとの「討議 アルチュセールのアクチュアリティ」で市田さんが、本書の構想を語られていて、足掛け何年のホント待望。もったいなくて、ただいまゆっくり読書中。ちなみに最後はこう締められている「同志諸君、ともに笑おうではないか! 手紙を送ってくれたまえ! 弁証法を背後から襲う二重化の策略は、このように貫徹された。」


5 雨宮処凛『反撃カルチャー プレカリアートの豊かな世界』角川学芸出版(2010)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201001000340
雨宮さんの本でRLL∞+∞=∞が変態左翼として登場。梅原北明とドゥルーズを交配させた赤裸々な過去が暴かれる!? RLLお勧め本は政治哲学とか多すぎて難し過ぎると思っている人は、この本からはじめるといいよ!


6 オルトヴィン・ヘンスラー『アジール その歴史と諸形態』国書刊行会(2010)
http://rakuhoku.blog87.fc2.com/blog-entry-658.html
網野善彦と阿部謹也に影響を与えているという歴史的名著決定している伝説の本、ようやく邦訳ですよ!高くてまだ購入に至っていないながらランクインw 図書館に入ってないかしらん


7 ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』ハヤカワepi文庫(2007/2010)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310062.html
http://book.asahi.com/review/TKY200703270219.html
ポストコロニアルな収奪/買春/観光される側から書かれた、それでいて文学としての水準が異様に瑞々しく、有り体でいうとセゼール春樹のような青春小説w アピチャッポン・ウィーラセタクンのパルムドール、バンコクの反独裁民主戦線のバリストと並び、個人的に中産階級化するタイへの憧憬を強めた一冊。


8 野田努、三田格、松村正人、磯部涼、二木信『ゼロ年代の音楽 壊れた十年』河出書房新社(2010)
http://www.dommune.com/ele-king/news/000173/
野田努×磯部涼×二木信のぱちか村トークショウの中身が最高すぎて、重要な部分はオフレコになったのがちょっと残念だけど、それでもこのディスクレビューのお陰でこの10年を振り返られる。元remix人脈が新しくele-kingを立ち上げたことにも嬉しい。二木くんの落とした原稿を読みたい。


9 ヴィクター・ヘッドリー『ヤーディ』トランス・ワールド(2010)
http://mediadefrag.jp/project/yardie/
荏開津広さんと浜田淳さんの「世界の青春」叢書の一冊目、これは期待しない方がおかしい。スカーフェイスやギャングスタ、レゲエ/ジャマイカ/ルーディの世界観が好きなら必読。解説に唐突に、でも必然を持って新自由主義が挿入されると、それは過酷な世界への想像力の話へ飛躍する。読後はコカインの様に上がる。


10 シーザー・パディーヤ『アンダーグラウンド・ロックTシャツ RIPPED』ブルース・インターアクションズ(2010)
http://p-vine-books.com/books/2953
困るんだよねー、こういった本出されるとRLLの元ネタわかっちゃうじゃない、とクレーム付けたくなるほどいいTシャツが満載。ハイファッションにはないコクが出た使用後の捨てられないTシャツを持つ同志達へ。この価値観は世界中で共有されているんだ、安心してタンスを肥やそうじゃないか。





∞+∞=∞ 2010年の?冊

1 The Penland Book of Handmade Books: Master Classes in Bookmaking Techniques
http://www.amazon.co.jp/dp/1600593003/
 キンドルやipadの登場、オートスキャナーと裁断機による本の自宅での簡単な電子化環境(自炊環境)が整い、本が消えていこうとする現在、フェティッシュな意味で「本」を問い直すべき最高の方法論を提示するのが本書である。つまり、完全なハンドメイドによる本という規格や概念の破壊と、本というシステムへの抵抗であり、最良の意味で概念の枠組みがはずされた結果、自由で、アナーキーな「本」が個々の作家それぞれの声を、解放を、浪々と謳いあげる。あふれ出し、ぶちまけられた「本」は作家のアイデアの琴線の上をサーフィンし、情熱をドライブする。ページをめくるたびに加速されたテクニックとフォルムが次々と襲い掛かり、恍惚のジャブやフックが繰り出される。完全なノックアウト。後には、「本」とは何か? ではなく、それはもはや過去形であり、我々が「本」と思い込んでいたものは何だったのか? なぜ我々はこれが本だと思い込んでいたのか? という問いだけが残される。アートで言うならばダダ、音楽で言うならばフルクサスやパンク。「本」というスタイルがまだモダンでしかなかったことを確信させる、圧倒的な衝撃とアイデアを無数に詰め込んだ概念と方法の道具箱にして真の意味の情熱の覚醒剤。これほど本を作りたくなる本は無い。そしてまた、自分自身の本を生み出すということこそが「本」を守り、愛しぬくただ一つの方法だということを歓喜を通して身に染み込ませる最良の一冊。


2 Eco Books: Inventive Projects from the Recycling
Terry Taylor
http://www.amazon.co.jp/dp/1600593941/
 卵のパック、カセットテープ、お茶のケース、クレジットカード、コーヒーのフィルター、あらゆる身近なものに言葉の弾丸を詰め込み、圧縮し、世界を綴じ込む、アイデアと技術の宝庫。


3 The Guerilla Art Kit
Keri Smith
http://www.amazon.co.jp/dp/1568986882/
 イリーガルでヴァンダライズなものとして認知されたバンクシーに代表されるハードコアなゲリラアートを、日常的にポップにソフトランディングさせようとする啓蒙書。近所の空き地に勝手に種をまく「ゲリラグロウ」や、ゴミ箱やポストを顔にしてしまう「メイクフレンド」、自分が受け取ってみたいラブレターを路上に放置する「ラブレター」、標識や路上のオブジェにニットをかぶせてかわいくしてしまう「ニットタグ」、様々なメッセージを布に書いたり、プリントし、木々や電線にぶら下げる「バナー」などなど。小さな不定形の詩がトラップとなって街中にばら撒かれ、日々を革新し、更新し、交信する。



付箋のフェティシズム

付箋のない生活なんて考えられない。

常に付箋を持ち歩いていないと落ち着かないボクは、出かける前には必ずズボンのポケットの中に何色かの付箋を仕込む。付箋がキレる禁断症状が起こるので手帳やカバンの中にも予備のものを仕込んでおく。

何のために付箋を使うのかというと、読書中に本のツボを押すためである。その本のツボを発見したときに付箋が手元にない状況は本当に苦しい。そんなときはポケットをまさぐってレシートなどを発見すると、引きちぎって簡易付箋を作成するのだが、やはりそれでは的確にテクストのツボに刺激を与えることはできない。読書という行為は、本から快楽を得るためだけではなく、本にも快楽を与えてあげなければならない、というのがボクの持論である。本を通じて著者との交歓を楽しむのである。著者があの世にいる場合はさらにその重要性を増す。付箋にぐにゅぐにゅした文字を走り書きして霊符として活用することもある。

fusen

悲劇は度々起こる。ズボンと一緒に洗濯された付箋の無惨な姿を何回見たことだろうか。付箋としての機能を失った歪な紙の塊・・・なんと美しい彫刻物だろうか! 



書斎で出会う言葉たち

野球場
書斎などという立派な場所はウチにはない。本がある空間、本を開く空間が書斎となるだけだ。それは図書館だったり、電車の中だったり、蚊に刺されがちな公園だったり、コーヒーおかわり自由のミスドだったり、夕暮れの野球場のバックグランドのベンチだったり。手当たり次第、興味のある本を読み始めるものだから、なかなか一冊の本を読み終わらない。永遠に終わらない読書ってのもロマンチックでよい。

いま興味のあるジャンルはだいたい三つに分類される。まず旬なのは思想家などの偉人/奇人の自伝/評伝。ボクはその人の思想よりも人生に興味があるみたいだ。最近は映画熱も復活してきた。薬物エピソード満載のデニス・ホッパー『狂気からの帰還』と三人の大女優と結婚/離婚を繰り返した映画監督ロジェ・ヴァディム『我が妻バルドー、ドヌーヴ、J・フォンダ』がたまらない。人生は演出と演技の繰り返し。思想家の人生以上に監督や俳優の人生に学ぶものは多い。上野俊哉『思想家の自伝を読む』はボクの興味にストライク。エピソードの堀り方、繋ぎ方の参考になる。

自伝本
最新の人文書もなるべく読んでいきたい。隠遁ごっこをしている身ではあるが、やはり自分がどんな時代を生きているか深く知りたいからだ。ジョン・リーランド『ヒップ』は人文書コーナーで見かけた。装丁はIntellipunk。高祖岩三郎の新刊『死にゆく都市、回帰する巷』の装丁も彼。先日、一時帰国中の高祖さんとお茶する機会に恵まれ、ボクが素敵な装丁のお礼を言われたのだが、ボクは何もしてない。これが役得というやつだろうか。『アンチ・オイディプスの使用マニュアル』のステファヌ・ナドーとも来日時に交流できた。日本語を使いこなすナイスガイ。サインをねだる皆に手紙のような長さの日本語混じりの英語/仏語の言葉を即興で書きなぐってた。さすが児童精神科医、コミュニケーションのプロ。マラッティ、ビフォ、VOLを読んで、コミュニケーションと労働と蜂起について勉強。ペペ長谷川氏に「これは事件だ!」といわしめた『来たるべき蜂起』も早く読まなくては。

人文書
一番の関心事は日本芸能史。語りだしたらキリがないからこれはまた別の機会に。研究発表を気流舎で8月にやる予定。

歴史と芸能



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