プロテスト・ソング・クロニクル
RLL 2011′S BEST BOOKS
毎年恒例、RLLの今年の本。今年は入院したり、拘留されたりで、不覚にも本を集中的に読む時間ができてしまった!
1 『通天閣 新・日本資本主義発達史』酒井隆史(青土社)
新世界を深くディグったマニアよだれもんのレアグルーヴ集。借家人同盟や野武士組が奏でるディープサウスサウンドのファンキーさといったら。
2 『対極と爆発 岡本太郎の宇宙 1』岡本太郎 著 山下裕二、椹木野衣、平野暁臣 編(ちくま学芸文庫)
生誕100年を記念して、椹木野衣さんが編んだ「対極と爆発」は、バタイユと花田を繋ぐ思想家としての岡本太郎を全面に押し出す。新作「夜の会」Tシャツのお供に。
3 『暇と退屈の倫理学』國分功一郎(朝日出版社)
全ての人に暇を! これが本書の魅力的なアンサーだが、そこに至るまでの過程こそが重要な最高に面白い退屈本。
4 『公然たる敵』ジャン・ジュネ(月曜社)
パレスチナの戦士やブラックパンサーらの、追いつめられ立ち上がった敵ばかりの世界で、突き詰めると決死の闘いの先には「敵はいない」って答えがゴロリと転がっている。
5 『ガブリエル・タルド―贈与とアソシアシオンの体制へ』中倉智徳(洛北出版)
タルドは市場の起源としての「市」を祝祭と商いの「周期的な夢幻の街」と呼んだ。余暇の増大、相互歓待、上機嫌の拡散、アソシアシオンの体制への誘惑。
6 『誘惑論・実践篇』大浦康介(晃洋書房)
謎のダンス教師が誘惑の極意を語るインタビュー本。京大の仏文の先生が書いた奇書。
7 『ガール・ジン「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』アリスン・ピープマイヤー(太田出版)
これ、女子の気持ちがわからない文化系男子は、ゼッタイに読むようにね。だからってモテるわけじゃなく自分で動き出したくなるだけだよ。
8 『釜ヶ崎のススメ』原口 剛、白波瀬 達也、平川 隆啓、 稲田 七海(洛北出版)
雑な魅力がごった煮の雑誌のような人文書。とにかく折り返しの料理の写真がうまそうでたまらん。釜ヶ崎本がこんなにポップなことに驚き。
9 『文化系のためのヒップホップ入門』長谷川町蔵、大和田俊之(アルテスパブリッシング)
『どーもすいません』『EV.Cafe 超進化論』『シャングリラの予言』『アフロディズニー』的なテキトー放談で語り尽くす入門形式でhiphopを料理した最良の解。
10 『プロテスト・ソング・クロニクル 反原発から反差別まで』鈴木孝弥(ミュージックマガジン)
2011年をある断面で象徴する1冊。日本でプロテスト・ソングがこんなにアクチュアリティーをもって聴かれた時代があっただろうか?! その動機ゆえに筆圧の高い必読の音楽本。
それ以外の注目すべき2011年の本たち
『怒れ!憤れ!』 ステファン・エセル(日経BP社)
『反資本主義宣言―フランスNPAの挑戦』フィリップ・ピニャール(柘植書房新社)
http://www.jrcl.net/frame110221d.html
『ショック・ドクトリン—惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン(岩波書店)
『シャンタラム』グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ(新潮社)
『チェのさすらい』ラモン・チャオ(トランジスタープレス)
『現代詩手帖』2011年 04月号「追悼特集エドゥアール・グリッサン――〈全-世界〉の方へ」(思潮社)
『ニグロとして生きる』 エメ・セゼール(法政大学出版局)
『革命―資本主義に亀裂をいれる』ジョン・ホロウェイ(河出書房新社)
『戦略の工場―レーニンを超えるレーニン』アントニオ・ネグリ(作品社)
『都市への権利』アンリ・ルフェーヴル (ちくま学芸文庫)
『〈資本論〉入門』デヴィッド・ハーヴェイ(作品社)
『無知な教師 知性の解放について』ジャック・ランシエール(法政大学出版局)
『女性・ネイティヴ・他者―ポストコロニアリズムとフェミニズム 』トリン・T.ミンハ(岩波人文書セレクション)竹村和子R.I.P.
『スピノザとわたしたち』アントニオ・ネグリ(水声社)
『21世紀マルクス主義の模索』ダニエル・ベンサイド(柘植書房新社)
http://hibinoawa.blog10.fc2.com/blog-entry-730.html
『哲学者の使命と責任 』ジャンニ・ヴァッティモ(法政大学出版局)
『スピノザと政治 』エティエンヌ・バリバール(水声社)
『イデオロギーとユートピア』ポール・リクール、ジョージ・H・テイラー(新曜社)
『マルセル・モースの世界 』モース研究会(平凡社新書)
『言説、形象(ディスクール、フィギュール) 』ジャン=フランソワ・リオタール(法政大学出版局)
『アンフォルム―無形なものの事典』イヴ=アラン・ボワ、ロザリンド・E・クラウス(月曜社)
『なぜマルクスは正しかったのか』テリー・イーグルトン(河出書房新社)
『笑い―その意味と仕組み 』 エリック・スマジャ(文庫クセジュ)
『ナショナリズムと想像力』ガヤトリ・チャクラヴォルティ・スピヴァク(青土社)
『三人称の哲学 生の政治と非人称の思想 』ロベルト・エスポジト(講談社選書メチエ)
『だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ?―ジャズ・エピソード傑作選』ブリュノ・コストゥマル(うから)
『フリーダム・ドリームス: アメリカ黒人文化運動の歴史的想像力』ロビン・D・G・ケリー(人文書院)
『ジェイコブズ対モーゼス: ニューヨーク都市計画をめぐる闘い』アンソニー・フリント(鹿島出版会)
『西洋美術史を解体する』白川昌生(水声社)
『生と芸術の実験室スクウォット―スクウォットせよ!抵抗せよ!創作せよ! 』金江、金友子(インパクト出版会)
『アート・スピリット』ロバート・ヘンライ(国書刊行会)
『デザインと犯罪』ハル・フォスター(平凡社)
『アイ・ウェイウェイは語る』アイ・ウェイウェイ、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト(みすず書房)
『民衆騒乱の歴史人類学―街路のユートピア』喜安朗(せりか書房)
『日本脱出記』(ペーパーバック版) 大杉栄(土曜社)
『パリ五月革命 私論-転換点としての68年』西川長夫(平凡社新書)
『スピノザの方法』國分功一郎 (みすず書房)
『レヴィ=ストロース 夜と音楽 』今福龍太(みすず書房)
『〈真理〉への勇気 現代作家たちの闘いの轟き』丹生谷貴志(青土社)
『私自身であろうとする衝動 関東大震災から大戦前夜における芸術運動とコミュニティ』倉数茂(以文社)
『VOL 05 エピステモロジー特集』金森修、近藤和敬、 森元斎(以文社)
『空間のために 遍在化するスラム的世界のなかで』篠原雅武(以文社)
『生権力論の現在―フーコーから現代を読む』檜垣立哉(勁草書房)
『吉本隆明と柄谷行人』合田正人(PHP新書)
『哲学への権利』西山雄二(勁草書房)
『「労動」の哲学 人を働かせる権力』濱本真男
『山に生きる人びと』宮本常一 (河出文庫)
『宮本常一 旅の手帖―愛しき島々』宮本常一(八坂書房)
『現代思想 2011年11月臨時増刊号 総特集=宮本常一 生活へのまなざし』(青土社)
『あの日からのマンガ』しりあがり寿(エンターブレイン)
『ブラック・カルチャー観察日記 黒人と家族になってわかったこと』高山マミ (P‐Vine BOOKs)
『GLOCAL BEATS』大石始・吉本秀純(音楽出版社)
『GET BACK, SUB あるリトル・マガジンの魂』北沢夏音(本の雑誌社)
『音楽が終わって、人生が始まる』磯部涼(アスペクト)
『監獄ラッパー B.I.G. JOE 獄中から作品を発表し続けた、日本人ラッパー6年間の記録』B.I.G. JOE(リットーミュージック)
『ぼくはお金を使わずに生きることにした』マーク・ボイル(紀伊國屋書店)
『再起動せよと雑誌はいう』仲俣暁生(京阪神Lマガジン)
『音盤時代VOL.1』浜田淳(DISK UNION)
『外泊外伝: ホームエバー女性労働者たち510日間のストライキの記録』「外泊外伝」編集委員会(現代企画室)
『さいごの色街 飛田』井上理津子(筑摩書房)
『記憶のちぎれ雲 我が半自伝』草森紳一(本の雑誌社)
『同時代批評 17 「総特集平岡正明という思想」』
菅孝行、上杉清文、梁石日、伊達政保、足立正生、高取英、岡庭昇、山崎洋子、平井玄、布川徹郎、石飛仁、阿部嘉昭、二木信、八木忠栄、村中豊、友常勉、五所純子、瀧口浩、ハーポプロダクションほか(岡庭昇事務所)
- Action
- By harpobucho / Dec 31, 2011 1:17 am
プロテスト・ソング・クロニクル 反原発から反差別まで
デモやらなにやらやっていて、告知をすっかり忘れていてすいません。
この『プロテスト・ソング・クロニクル 反原発から反差別まで』の執筆に参加しました★
鈴木孝弥さんのまえがきの「<3・11>を体験した今こそ味わいたい<闘いの歌>」が熱くてここだけでも読んで欲しい!
多くの人、特に若い世代の読者にとって、<プロテスト・ソング> は <ラブ・ソング> <ノヴェルティ・ソング> のような、観賞用ポピュラー・ソングのいちカテゴリーに過ぎなかったかもしれない。しかし<3.11>以降、この <プロテスト・ソング> という語の語感が、みなさんの中で何かしら変化してはいないだろうか? あの事故以来、新旧の反原発ソングを自宅で、携帯プレーヤーで、デモの現場で、クラブで耳にしたとき、<音楽を楽しむ> という感覚の内部に、過去未体験の、文字通り”リアリティ”を伴う、胸の奥が軋むような共鳴を感じなかっただろうか?心当たりのある人は、そのとき <プロテスト・ソング> が鑑賞の対象物から初めて自分の道具になったのだと思う。共鳴は同感であり、その <プロテスト> はすなわち自分の感情の代弁である。そして、その楽曲は自分の叫びの拡声器である。実際に具体的な抗議アクションを起こせば(それを促すことこそアーティストの作曲意図であるはずだが)、その曲は抗議に集まった市民の旗印にもなる。そしてその場においてのみならず、インターネットを介して敵を狙い撃つ闘いの武器になる。そしてさらなる共鳴を波及させ、賛同者を引き寄せて運動を拡げるツールにもなる。
ホント俺の原稿なんて読まなくていいから、でもすごく興味深いたくさん抵抗の歌が紹介されているのでYouTubeで聴きながら読むとアガリマスよ。
色んな有名な執筆者の読み応えがある記事の中で、ちょっと変なバランスのとれないことを書いてるのが僕です。
書いたのは以下の3曲!
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=yaqQYetCH8U[/youtube]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=X-MSQQwy-AQ[/youtube]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=fNUbKdkPQBk[/youtube]
いずれも名曲。
ホントはマニックスの「Nat West–Barclays–Midlands–Lloyds」とプライマルの「Come Together」とローゼスの「Elizabeth My Dear」の政治性について書くつもりだったんだけどな。おかしい。
孤独のダンスの911の話とシップビルディングのサッチャーの話は、プロテスト・ソング本に欠かせないと思ってねー
9月18日放送のTBSラジオ『高橋芳朗HAPPYSAD』で鈴木孝弥さんがこの本の紹介と、いい話してるんで、よかったら聞いてみて!
http://www.tbsradio.jp/happysad/2011/09/-20110918-2.html
ポットキャスト→http://podcast.tbsradio.jp/happysad/files/0918happysad_goodfriends.mp3
孝弥さんがかけた曲
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=7cSAKlu0OlU[/youtube]
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=0WxgeYXCjM8[/youtube]
- Intellipunk
- By intellipunk / Oct 07, 2011 10:35 pm
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